2022年12月24日早朝。
ほぼ毎年信州にやってくるクリスマス寒波。今年は文字通りクリスマス・イブにやってきた。
起きて窓の外を見ると昨晩から積もったであろう10cm程度の雪。そして、まだ気がすまないのかしんしんと降り続ける様子。
こんな天候にもかかわらず、伊奈香澄がどうしても出かけたかった場所とはどこでしょうか?
信州には規模の大小に限らず多くのクラフトビールメーカーがあります。このブログでも、「ヤッホーブルーイング」と「オラホビール」を何度か紹介してきました。
しかし、信州にはヤッホーブルーイングやオラホビールと肩を並べる有名なクラフトビールメーカーがあるのです!
そのメーカーの名前は「軽井沢ブルワリー」。
マイクロブルワリーを含めて信州のクラフトビールメーカーを日々チェックしている伊奈香澄。信州に移住する前から「軽井沢ブルワリー」はもちろん知っており、何度か「THE軽井沢ビール」を飲んだこともあります。ただ、なぜかあまりご縁がなかったのです。
一方、クラフトビールに日々興味が注がれる伊奈香澄。いつか工場見学がしたいと思っていました。
そこで見つけたのが「軽井沢ブルワリー」の工場見学なのです。
この記事では長野県佐久市にある「軽井沢ブルワリー」の工場見学の様子を紹介いたします。なお、この記事に掲載している写真はすべて撮影の許可を得ております。(メーカーによっては写真撮影禁止の場合もあります。)
あなたもこの記事を読んで「軽井沢ブルワリー」のとりこになりませんか?
「軽井沢ブルワリー」とはどのようなメーカーなのか?
1994年、ビール業界を襲った衝撃の改革。ビールの酒造免許取得に必要な最低醸造量がそれまでの年間200万リットルから一気に6万リットルに引き下げられたのです。
これを機に雨後の筍のように日本中に設立されたクラフトビールメーカー。当時はまだ、「地ビール」と呼んでいました。
しかし、雨後の筍のように乱立したクラフトビールメーカーはその後、筍の季節の終りを迎えたかのように淘汰されてしまいました。
そのような業界の様子を見つつ、クラフトビールの品質を危惧していた一人の男がいました。
のちに「軽井沢ブルワリー」の会長兼社長となる和田康治氏です。
「軽井沢ブルワリー」の創業者である和田康治氏とは?
和田康治氏は大学を卒業して、酒造メーカーへ就職。その後、洋菓子に真摯に向き合うパティシエと出会ったことをきっかけに、昭和44年(1969年)に製菓用洋酒を輸入・販売をする商社「ドーバー洋酒貿易」を立ち上げたのでした。
しかし、本当にやりたかったことは洋酒の製造。酒造免許取得に必要な資金を洋酒の輸入・販売で稼ぎ、ようやく酒造免許を取得して洋酒メーカー「ドーバー酒造」を立ち上げたのが昭和53年(1978年)でした。ビールの醸造免許の規制緩和がされたころの「ドーバー酒造」は2か所目となる工場を兵庫県内で竣工して業務を拡大していた真っ只中。
しかし、和田康治氏はクラフトビールメーカーの乱立と衰退を心配していました。
昔のクラフトビール(地ビール)の問題点とは?
当時のクラフトビール(地ビール)は町興しや地域のPRのために作られた側面が強く、味や品質、それに衛生面の管理はお世辞にもいいものとは言えなかったそうです。また、誰もが楽しめるビールというよりは個性を全面に押し出したビールが多く、ニッチでマニアックなものだったとも言われています。
しかし、「ドーバー酒造」で品質を第一に考えてきた和田康治氏は思うのです。「万人が称賛する本格派のビールを作りたい」と。そこで2011年に設立されたのが「軽井沢ブルワリー」なのです。
誰もが楽しめるクラフトビールを食卓で
「軽井沢ブルワリー」のクラフトビールは和田康治氏の思いの通りいい意味でクセがなく、普段はビールを飲まない人でも楽しめそうなシンプルな味わい。しかも、パッケージには有名な画家である千住博氏の絵画をあしらったものもあります。
それまでビールが並ばなかった食卓にも自然と溶け込む。誰もが楽しめるクラフトビールを目と舌で堪能してほしい。
「軽井沢ブルワリー」のクラフトビールにはそのような願いが込められているのです。
ちなみに冒頭の写真は工場のエントランスで撮影したもの。右奥に見えるのは千住画伯の作品「ウォーターフォール」です。
貴重な製造工程をまじまじと見学
それではお待ちかねの工場見学に行ってみましょう!工場見学はWebや電話で予約した人なら誰でも参加できます↓
まずは準備をしましょう。見学する人はシューズカバーをつけます↓
本来ビールは甘い飲み物?ビールのもとになる麦汁とは?
はじめに見学したのは「仕込み」↓
あなたはビールがどのように作られるか知っていますか?
この質問に答えられる人は相当ビールが好きなのだと思います。しかし、工場見学はそのような知識がない方でも楽しめう内容となっていました。(伊奈香澄もまだ勉強中です)
ビールの製造工程を大きく分けると、はじめの工程が麦汁作り。麦汁とはビールの原料となる麦芽を煮込んで作る液体です。以外ですが麦汁はとても甘いとのこと。(伊奈香澄もまだ麦汁を飲んだことはありません)
見学時は土曜日だったため設備が稼働していませんでしたが、平日に設備が稼働するとこの部屋中に甘い香りと熱気が充満するそうです。
ちなみに麦芽のサンプルも展示されていました↓
実はもう一つの主要な原料であるホップ。
※ホップについてはこちらの記事で解説しています↓
麦芽のサンプルのとなりにはホップのサンプルも置いてあり、香りをかぎました。品種にもよると思いますが、やさしいビールの香りがして昼間から幸せな気分になれたのです。
次に見たのはこれです↓
これ何だと思いますか?わかった人はやはり相当なビール好きだと思います。この写真の場所を上空から見るとこんな感じです↓
はじめにいたのは左側の建物。そして、通路の外に見えた壁のようなものは二列に並んだ貯蔵タンクなのです。
写真の通路は貯蔵タンクの間を貫いて写真右側の建物に繋がっています。ちなみに貯蔵タンクとは完成したビールを一時的に貯蔵しておく(熟成させる)場所。中はビールのお風呂のようになっているでしょう!
あなたはどれだけ知っている?ビールと酒税(税金)の関係
二つ目の建物に入ったら見学は少し休憩。ここでは「軽井沢ブルワリー」のクラフトビールやビールと酒税の関係について学びます。
はじめに説明を受けたのは「軽井沢ブルワリー」で生産されるクラフトビールの数々↓
出荷される荷姿としては缶、ビン(一人用)、そして飲食店向けの樽があります。遠目から見るだけでもパッケージに目を惹かれます。ちなみに左上の青い缶に書かれているのは千住画伯の「ウォーターフォール」、右上に書かれているのも千住画伯が描かれた桜の絵です。なんと、「軽井沢ブルワリー」のビールを買うと千住画伯の絵も楽しめるという豪華特典付きなのです!
ビールと酒税の関係はこちらのパネルですぐにわかります↓
麦芽を50%以上含むビール(発泡酒や第三のビールではない)の350mL缶1本あたりの酒税は70円。副原料が増えていくに連れて酒税は安くなり、麦芽に麦スピリッツを加えたり麦芽をまったく使用しない新ジャンル(第三のビール)では酒税は38円となります。
ちなみに麦スピリッツとは麦由来の蒸留酒。ビールや発泡酒は麦芽と副原料(麦芽以外の原料)の割合が異なるだけですが、新ジャンルは全く別のアルコールを加えたもの。似て非なる飲み物なのです。
トップが開いている缶?ビールの缶詰工程の迫力
ここからはビールを缶に詰める工程を見学できます。その様子がこちらです↓
写真の右側(作業員の方の近く)に並んだ缶。まだふたがされていないのが分かるでしょうか?この缶がレールに沿って左下の丸い部分に運ばれて中にビールが注がれます。ビールを運ぶ様子はこちら↓
写真の左上から右下に向かって運ばれば空の缶は、90°右に折れ曲がるとすべり台のようなスロープを下って先ほどの丸い部分に到達します。
そして、ビールが注がれたのちフタがついて缶詰の工程の終了です。まるで口開けて親鳥からえさをもらう子どもの鳥のようですね。
ビールを詰められた缶はその後、重量検査と品質を損なわない程度の低温で熱処理をされてから出荷されるそうです↓
ちなみにこの奥の工程では製品(ビール)が入った箱のハンドリングが行われてました。ハンドリングをしていたのは70代になっても元気はたらく信州のおじいちゃん……ではなく最新鋭のロボットハンド↓
重量物を人間が持ち上げる日がこなくなるのは、意外と近い将来かもしれません。
見学後の太っ腹なおもてなしとは?
工場見学が終わったあとはクラフトビールの試飲ができます。いつもは伊奈香澄のインプレッサで行く家族旅行ですが、この日は試飲をしたかったので香澄妻の車で行きました。(行きは伊奈香澄が運転、試飲後は香澄妻が運転)
……ということは思い切りビールが飲めます!
壁に飾られた絵画ときれいな雪景色
試飲会場に入ってはじめに目に飛び込んできたのがこの景色↓
広い試飲会場の奥には千住画伯の絵が飾られており、絵画を鑑賞しながらクラフトビールを飲める贅沢な空間なのです。
そして左を向くと佐久市内の様子が↓
雪があまり多く降らない佐久市ではめずらしい雪景色。晴れていればテラス席で浅間山を眺めながらビールを試飲できたそうです。
そういえば上にサックスの写真がありましたよね?あれ、何だと思いますか?
答えはこの次のパートにあります↓
3種類から選べるビールの試飲
工場見学で試飲できるビールなんて、銘柄は選べないし一口だけなんでしょ?
心の片隅にこのような思いが浮かんだあなた。思う存分驚いて下さい↓
「軽井沢ブルワリー」のすごいところ3種類の中から銘柄を選べるだけでなく、ビールグラス一杯分試飲できることです!(もはや試飲ではない?)そして、運転手には麦茶を、未成年にはジュースを出してくれます。
また、大人の参加者には必ずつくお土産。運転手には缶ビール1本と瓶ビール(一人用)1本、ビールを試飲する人にも缶ビール1本をくれるのです。
ちなみに「軽井沢ブルワリー」の店頭価格は、他のビールと比べてやや高い300円台。工場見学の料金は大人一人500円ですので、試飲だけでもおつりがくる(メーカーからしたら赤字)計算です!
話を戻して、ビールを試飲することにしましょう。しかし、ビールサーバーからビールを注ぐ口が見当たりません!
しかし次の瞬間、その疑問は解けたのです。なんとビールが出てきたのはこの場所↓
なんとサックスのオブジェに見えたのはビールの注ぎ口だったのです!しかも、本物のサックスを使って作ってるとのこと。
楽器経験者にとっては少し複雑な気持ちかもしれませんが、演出の話題性としてはありかもしれません。
そして、3種類の中から伊奈香澄が選んだ1杯はこちら↓
販売されるときは缶に千住画伯の絵が描かれた銘柄です。飲んだ感想はこちら↓
- ほのかに柑橘系の香りがあり、炭酸も弱いため飲みやすい
- クラフトビールを飲んでいるというよりは、クラフトビールの味がついた清涼な水を飲んでいるという印象
- 一気に飲むよりは少しずつ口に含み、味と香りと余韻を楽しむのが合う
冒頭で紹介した和田康治氏の言葉が嘘ではなかったことをこのビールが物語っています。
クラフトビールによくあるようなわかりやすいクセはたしかにありません。しかし、普段ビールを飲まないような人でも楽しめそうなこのクラフトビール。まさにそれまでビールがなかった食卓に、自然と溶け込める味だと思います。
ちなみに1杯300円の追加料金を払えば、他の銘柄も試飲できます。(量はもちろんグラス1杯分!)
ビール好きにはたまらないお土産コーナーも
ビールを楽しんだあとは、お土産も見てみましょう↓
伊奈香澄が買ったのは缶ビールとビールグラスのセット↓
缶ビールはまだ飲んでいないので、ゆっくり楽しもうと思います。
最後に
今回は長野県佐久市にある「軽井沢ブルワリー」の工場見学の様子をお伝えしました。
え?なんですって?「軽井沢ブルワリー」なのに軽井沢町に工場がないのは軽井沢詐欺じゃないか!ですって?
安心してください。「軽井沢ブルワリー」の本社は軽井沢町にあり、工場がある佐久市も軽井沢町から車で約30分と近い距離あります。
工場見学ではクラフトビールの製造工程を見られるだけでなく、ビールと酒税の関係を学べたり千住画伯の絵画がパッケージになった製品が見られました。
また、試飲会場では同じく千住画伯の絵画と佐久の雪景色、そして太っ腹にビールグラス1杯分のクラフトビールを飲めました。
これだけ楽しめて料金はたったの500円。「軽井沢ブルワリー」に興味がある人だけでなく、クラフトビールが好きな人は必見の工場見学です!
ただし、試飲をしたいときは車の運転を他の人に頼むか、近くにある北陸新幹線佐久平駅からタクシーを利用しましょう。お酒を楽しめるのはルールを守れる大人だけです。
今年もあと少しでおしまい。今年の振り返りをぜひ「軽井沢ブルワリー」のビールと共に!
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ではまたのちほど。