信州の名産といえば、どのようなものが思い浮かびますか?
そば、野沢菜、おやきを想像する人が多いかもしれません。
信州は醸造(じょうぞう)文化が根付く場所。昔から醤油や味噌の製造(醸造)が盛んでした。
そういえば、以前ご紹介したお漬け物屋「木(こ)の花屋」を運営する宮城商店も、もとは醤油や味噌を醸造していました↓
そこで、今回は「信州味噌」の謎に迫りたいと思います。この記事を読めば、今まで古いものだと思っていた味噌の魅力を再発見できるでしょう。
「信州味噌」とは?
信州へ来ると「信州味噌」という言葉をよく耳にするかもしれません。
実は信州で作られた味噌すべてが「信州味噌」を名乗れるわけではないのです。
味噌の種類
「信州味噌」に限らず、そもそも味噌にはどのような種類があるのでしょうか?
- 米味噌:大豆と塩と米麹(こめこうじ)で作られる 全国的にも多い
- 豆味噌:米麹の代わりに豆麹を使う 東海地方で多く作られる(八丁味噌など)
- 麦味噌:米麹の代わりに麦麹を使う 九州、四国、中国地方で多く作られる
- 調合味噌:上記を混ぜたもの
詳しく知りたい人はこちら↓
ちなみに「信州味噌」は米味噌です。
今では全国的に有名な「信州味噌」ですが、有名になったきっかけは1923年(大正12年)に起こった関東大震災。救援物資として「信州味噌」を関東へ送ったところ評判がよく、広まったそう。
現在では、全国シェアの約50%を「信州味噌」が占めるようです↓
「信州味噌」を名乗るには?
「信州味噌」を名乗るには、次の二つの条件があります。
- 「長野県味噌工業協同組合連合会」に所属する味噌メーカーが作ること
- 長野県内で製造すること
実は「信州味噌」という名前は「長野県味噌工業協同組合連合会」が商標を取得しています。
そのため、同連合会に所属する味噌メーカーしか「信州味噌」を名乗れないのです。また、長野県内で製造されることも「信州味噌」を名乗る条件となります。
「長野県味噌工業協同組合連合会」とは?
それでは「長野県味噌工業協同組合連合会」とはどのような組織なのでしょうか?
同連合会は原材料の共同購入や製造技術者の育成、そして味噌関連の研究を目的として活動しています。
とくに研究には力を入れており、同連合会が運営する「信州MISOラボ」では、次のような活動をしています。
- 「味」「香り」「色」「組成」などの研究
- 「長野県みそ品評会」、「市販味噌研究会」の開催(毎年)
- 味噌に含まれるアレルギー物質や栄養素の分析・検査
- 研究の成果報告「信州味噌技術講習会」 の開催(毎年)
- 技術者養成講座、技術相談など
味噌󠄀は古いものだと、思っていませんか?
味噌は昔から食べられている食品です。また、近年では味噌汁を食べなくなった人もいると聞きます。
味噌はもう過去の食べ物なのでしょうか?
決してそのようなことはありません!味噌は伝統的な変えない部分と、時代に合わせて柔軟に変えた部分が合わさって、現代に存在しているのです。
ここでは、時代に合わせて姿を変えた味噌の一例を紹介します。
実は画期的なダシ入り味噌󠄀(マルコメ)
今では当たり前の「だし入り味噌」。開発のきっかけとなったのは、「マルコメの味噌で作った味噌汁が美味しくない」というクレームだったそうです。
聞けばだしを入れずに味噌をお湯で溶いていたそう。だしを入れないと美味しくないのは当然ですが、当時は女性の社会進出が盛んになり料理の時間を少しでも減らしたいというニーズがあったそうです。
そこで1982年に発売したのが「料亭の味」。
味噌にそのままだしを入れると、味噌に含まれる酵母がだしの旨味を分解してしまうそうです。そこで、酵母のはたらきを止めるための専用の加熱装置をメーカーと協同で開発し、商品化に成功したのです。
コクが楽しめるみそソフト(すや亀)
ご当地スイーツはどこに行ってもあるもの。中には奇をてらっただけで、味は……というものもあります。
しかし、すや亀が作るみそソフトは十分な話題性があることはもちろん、味も満足できるソフトクリームです。
ベースとなるバニラ味のソフトクリームと、ほのかに香る味噌の風味。一度だけ食べたことがありますが、不思議なコクを感じました。
オシャレな味噌マカロン(和泉屋商店)
佐久市にあるカフェ「ポアン」でつくられるマカロンの上に、和泉屋商店の甘味噌をぬったスイーツ。
サクサク、とろーっという二つの食感を楽しめるそうです。
新幹線や車の中でも気軽に食べられるため、軽井沢などに旅行に来た人に人気なのだそうです。
長野市にある「三原屋」の味噌はどんな味?
味噌を作った革新的な商品をつくる味噌蔵と対極にあるような味噌蔵が、長野市にある「三原屋」です。
実は、以前この味噌蔵から数十メートルの距離に住んでいた伊奈香澄。味噌蔵だとは知っていましたが、平日しか開いておらずなかなか行けませんでした。
そこで、今回はじめて「三原屋」へ行ってきました。
お店の様子
1848年創業の三原屋。お店(味噌蔵)に到着すると、見るからに歴史のある白壁の建物が出迎えてくれます↓
お店の入り口がある建物の隣には、同様の形をした建物が↓
写真から電線とパイロン(三角コーン)を消して白黒にすれば、かつての様子が目に思い浮かぶような気持ちになれます。
「三原屋」の商品ラインナップ
「三原屋」の一番のオススメ商品は「仕込みそ」↓
実はこの商品、本来賞味期限はありません。(写真のものは、すぐに食べられるように蔵で熟成させたようです)
通常であれば味噌は、味噌蔵で熟成させたのち賞味期限が決められた状態で商品として出荷されます。
しかし、「仕込みそ」はまだ熟成されていない状態。春に購入した「仕込みそ」を夏に熟成させ、食べ始められるのは秋頃からだそうです。
しかも、熟成させる期間は人それぞれ。淡色で中甘口の1年目、赤色で中辛口の2年目、褐色で辛口の3年目と変化を楽しめます。
熟成させる場所にいる微生物により味や香りが変わるため、二つとして同じ味噌にはならないそうです。
「手前みそ」をご家庭で作りたい方はぜひ。
他にも、スーパーなどに売っているような袋詰めされた味噌、信州の郷土食であるしょうゆ豆、塩こうじや醤油も売っていました↓
「三原屋」の味噌󠄀で作ったお味噌󠄀汁
一般的な袋詰にされた味噌を買った伊奈香澄。さっそく味噌汁を作ってみました↓
具材はキャベツ、ごぼう、鶏団子。
味噌は色のわりに味がしっかりしているため、味がうすい印象はありません。また、ごぼうがしっかり引き締めてくれるため、全体のバランスもよく仕上がりました。
味噌の塩味とキャベツの甘さのバランスも悪くありません。
一晩おいた後、いつも使っている赤だし味噌(八丁味噌)を加えると、赤だし味噌の甘味が合わさってより深みのある味になりました。
↑お店の方に「いつも赤だし味噌を使っている」と話したところ、「混ぜたら美味しいよ」と教えてくださいました。
おわりに
今回は味噌の種類や信州味噌の活用事例を調べ、実際に信州味噌を使って味噌汁を作ってみました。
本文では触れませんでしたが、味噌をはじめとする発酵食品は非常に体に良いものです。
お気に入りの発酵食品を食べて、健康になりましょう。
「三原屋」の味噌はこちらでも買えます↓
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「三原屋」はこちらの書籍でも紹介されています↓
ではまたのちほど。