どうも、書籍紹介の記事を書くためにその本を読み返していると、いつの間にか読書に夢中になっていた伊奈香澄です。
作業をしていると目的を忘れて夢中になるというのは、よくあることです(笑)
あなたは何歳ですか?
人生の中で節目となる年齢がやってくるタイミングがあります。
これまで成人とされていた20歳(2022年に成人年齢は18歳に引き下げられました)、社会にも慣れて若手から中堅となる30歳、そして経験も十分に積んで一番活躍できるようになる40歳。
一般的な節目となる年齢のタイミングはこのような印象でしょうか?しかし、これはあくまで「会社員」を前提にした場合です。
フリーランスの場合は、様子が少し異なるようです。
今回ご紹介するのは『フリーランス、40歳の壁』という本です。
著者の竹熊健太郎さんはフリーのライターです。1960生まれなので、年齢は66歳(2022年現在)です。まだ10代の頃にフリーランスとなり、ライターや編集、それに大学教員など様々の仕事をされてきた方です。
1990年にビッグコミックスピリッツから出版された『サルでも描けるまんが教室』という作品が大ヒットしました。また、近年では『電脳マヴォ』という漫画掲載サイトも運営されています。
この本では竹熊さんがフリーランス人生の中で経験してきた「壁」と、それをどう乗り越えたかということが紹介されています。
また、他のフリーランスにインタビューする形で、竹熊さんの他に5人のフリーランスも登場します。
近年、注目を集めているフリーランスですが、その人生は如何なものなのでしょうか。
あらすじ。
この本では竹熊さんの人生が赤裸々に語られてます。その一部を紹介します。
高校を卒業して専門学校に入学した竹熊さんは、わずか1年で中退(抹籍)してしまい、その後ライターの道へと進みます。相原コージさんとの共作である『サルでも描けるまんが教室』が大ヒットしたり、40歳を前にして結婚したりと順調であるように思えた人生は40歳頃を堺に変化します。
『サルでも描けるまんが教室』が大ヒットしたことにより、漫画評論の仕事が多くなりました。しかし、竹熊さんは同じような仕事が多くなったことに嫌気が差し、仕事を断るようになります。また、自分より若い編集者が多くなったこともあり、仕事が減ってしまったのです。
これが遠因になり、わずか2年ほどで結婚生活が終わってしまいます。また、ライターの仕事だけでは食べていけなくなった竹熊さんは、アルバイトで生計を立てるようになります。
しかし、ライターの仕事が少なくなっても生活のレベルを落とせなかったため、カードローンに頼るようになり、多重債務に陥ります。
そんな中、竹熊さんを助けてくれたのはなんと脳梗塞です。脳梗塞で倒れ入院を余儀なくされましたが、その保険金でローンの一部が返済できたそうです。
その後、大学の教員になるも、適応障害を発症してます。結局大学の教員も辞めることになりますが、大学の教員をしていた頃に出版した『コミック・マヴォ』という同人誌が、その後の竹熊さんの人生を変えます。
大学で知り合った学生が描く漫画を同人誌にして出版したのです。この本は今では『電脳マヴォ』と名前を変えて、漫画掲載サイトとしてWEB上で多くの人に親しまれています。
この本には他に5人のフリーランスが登場します。
- 『人喰い映画祭』のとみさわ昭仁さん
- 『磯野家の謎』の杉森昌武さん
- 『うつヌケ』の田中圭一さん
- 『秘密結社 鷹の爪』のFROGMANさん
- 『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』の都筑響一さん
『秘密結社 鷹の爪』は映画化もされたので、知っている人は多いのではないでしょうか。
竹熊さん以外のページも濃い内容となっています。お気に入りの人のページを読むだけでも、充分楽しめるかもしれません。
「やりたいことvsお金」を両立させるには?
あなたは映画のエンドロールを見る人ですか?映画のエンドロールを見ると必ず「○○○(映画のタイトル)制作委員会」という名前を目にすると思います。
これは小学校の時にあったクラスの委員会のように、やりたくないけど先生に言われて仕方なくやっている人の集まり……ではなく、作品制作にかかる莫大な費用を負担する複数の企業の集まりです。
これを制作委員会方式と言いますが、作者の目線になるとメリットとデメリットがあります。
メリットは制作費の負担を作者が負わなくても良いということです。
例えば30分程度のアニメを作る時、作品にもよりますが制作費は1,000万円を超えるそうです。アニメ制作には100名ほどの人員が必要で、制作費のほとんどは人件費(労務費)だそうです。これを作者が負担するのは、リスクが大きすぎます。
デメリットは出資者の意見に左右されることと、作者にはほとんど利益が残らないことです。
一つ目はある意味当然だと思います。株式会社で一番権力があるのは株主です。そのため、株式会社は株主総会の承認なしに大きな決済をすることが出来ません。同様に制作委員会方式だと、作者が出資者の意見を聞かない訳にはいきません。すると、自分の作品なのに自分の自由に作ることが出来なくなります。
また、利益が出てもそれは作者だけのものではなく、作者と制作委員会のものです。そのため、せっかく出た利益の大半が製作委員会の取り分になることもあるそうです。
資本主義の世の中で生きていく上ではお金は正義だと思いますが(決してお金が全てという意味ではありません)、映画やアニメという作品を作る世界でも事情は同じようです。
しかし、この両方を手に入れた人がいます。それは『秘密結社 鷹の爪』の作者であるFROGMANさんです。
『秘密結社 鷹の爪』は元々FLASHアニメとして始まっています。実はこれ、ほとんどFROGMANさん1人で作っているそうです。脚本を書き、複数のキャラクターの声優を1人で担当し、音声を編集し、絵を動かしているそうです。この頃には個人ではなく、DLEという会社に所属していましたが、個人の頃と同じスタンスで制作したそうです。
FROGMANさんは徹底したコスト意識を持ったクリエイターです。その理由はお金の工面が出来れば、口出しする人もいなく、手元に利益を多く残せるからだそうです。
竹熊さんもこの部分の考えは同じで、自分が良いと思った作品を世に広めるために『電脳マヴォ』という、自分で発信内容を決められる漫画掲載サイトを運営しています。その運営コストはやはり極限まで抑えているそうです。
コストのかからない商売。
あなたは最も儲かる商売は何だと思いますか?
それはコストのかからない商売です。厳密に言うと全くコストのかからない商売はありませんが、これを実践している人が、伊奈香澄の身の回りにいます。
それは香澄義父です。
香澄義父はこれまで何度か伊奈香澄のブログに登場しました↓
北信地方(信州北部)には根曲がり竹という小ぶりの筍があります。これは信州の名産で、毎年6月頃になると県内のスーパーや直売所に並びます。この筍、時期が限られることもあり非常に単価の高い農産物です。
香澄義父は根曲がり竹の時期になると、登山用のリュックサックを持って山に入り、根曲がり竹30kgを担いで山の急斜面を降りてきます。
少し話を聞くだけで大変そうだと思いますが、香澄義父はこんなに良い商売はないと言います。
それは単価が高いことはもちろんですが、コストがかからないからです。厳密には香澄義父が働いている時間があるので完全にタダではありませんが、従業員や仕入れ業者への支払いがないという意味ではタダです。
香澄義父は農業と一部不動産業で生計を立てていますが、根曲がり竹の時期が最も売上が良いそうです。もちろん誰かに雇われている訳ではないので、自分の仕事を自由に進めることができます。
FROGMANさんや竹熊さんの考えを実践している人がこんなに身近にいることに驚きました。
最後に。
いかがだったでしょうか。
今回は『フリーランス、40歳の壁』という本を紹介しました。この本では竹熊健太郎さんというフリーのライターの半生と、他5人のフリーランスの人がぶち当たった壁について書いてありました。
そして、その本を紐解くと分かる良い商売を実践している人が、伊奈香澄の身近にいることが分かりました。
この本を読むと「フリーランスという生き方はなんて波乱万丈なんだ!?」と思う人もいるかもしれません。しかし、まだまだ一般的ではないフリーランスという生き方を選んだ時点で、その他大勢とは違う人生なることは、肝に銘じておかないといけないのかもしれません。
もし、それでも楽しいと思えるのなら、それがあなたに取って良い選択なのかもしれません。
ではまたのちほど。